VANITAS(ヴァニタス)研究会とは
現代美術や写真を研究するメンバー7名で、ドイツとの共同研究のかたちで2020年から科研費基盤研究(B)として活動しています。
「ヴァニタス」とは旧約聖書に起源をもつ「生のはかなさ」や「現世の虚しさ」の観念で、17世紀オランダ静物画で人間の頭蓋骨や砂時計など独自の図像表現とともに主題化されました。この伝統的なモチーフは、その後も西洋の視覚芸術のなかに繰り返し多様なかたちで「回帰」し、とりわけ1970年以降の現代アートのなかに顕在化してきます。
現代の日本に目を転じると、西洋のような明確な図像の伝統はなくとも、独自の死生観のもとに「生のはかなさ」や「時のうつろい」を表現するアートや写真が多く見られます。これらを西洋との比較や影響関係というトランスカルチャーの視点から読み解き、革新と意味のずらし、批判やパロディといった新たな芸術批評の地平を拓くことを目指しています。
科研費:「近現代美術における死生観の研究~「ヴァニタス」表象を中心に」
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20H01206/
メンバー(五十音順):
石田 圭子(Keiko Ishida)
神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。美学・芸術論。東京藝術大学大学院美術研究科(芸術学専攻)博士後期課程修了。博士(美術)。著書に『美学から政治へ——モダニズムの詩人とファシズム』(慶応義塾大学出版会、2013年)、共著に『コンテンポラリー・アート・セオリー』(筒井宏樹編、EOS Art Books、2013年)。論文に「草間彌生の現在:草間彌生と晩年のスタイル」(『ユリイカ』2017年3月号)、Albert Speer’s “Theory of Ruin Value”, in Art Research Special Issue vol.1, Journal of Art Research Center, Ritsumeikan University, Feb. 2020.など。
https://researchmap.jp/7484
岡添 瑠子(Ryuko Okazoe)
早稲田大学 総合人文科学研究センター 招聘研究員。現代美術史。早稲田大学文学研究科人文科学専攻博士課程単位取得満期退学。論文に「展示の生まれる場 ——コンラート・フィッシャーのキュレーション」(『表象・メディア研究』7号)、「1980年代欧米主要現代美術画廊展覧会に関する調査研究(『鹿島美術研究(年報第37号別冊)』)、「イミ・クネーベル作品における「見えないもの」と「見ること」」(『表象・メディア研究』13号)など。
https://researchmap.jp/r_okazoe
香川 檀(Mayumi Kagawa)
武蔵大学 人文学部 教授。表象文化論、近現代美術史、ジェンダー論。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学(表象文化論コース)博士後期課程修了。博士(学術)。著書に『想起のかたち——記憶アートの歴史意識』(水声社、2012年)、『ハンナ・ヘーヒ——透視のイメージ遊戯』(水声社、2019年)。共著に『記憶の網目をたぐる——アートとジェンダーをめぐる対話』(小勝禮子氏との共著、彩樹社、2007年)。論文に、「現代美術における〈ヴァニタス〉の回帰——ジャン・ティンゲリの場合」(『武蔵大学人文学会雑誌』、2020年)、「天皇とヴァニタス——大浦信行の版画連作《遠近を抱えて》」(同、2022年)など。
https://3s.musashi.ac.jp/kgResult/japanese/researchersHtml/RT2C04002/RT2C04002_Researcher.html
マーレン ゴツィック(Maren Godzik)
福岡大学人文学部教授。ドイツ・ボン大学で日本学、社会学、東洋美術史を専攻。2000〜2002年、東京藝術大学に留学。2006年ドイツで、戦後日本の前衛女性アーティストに関する博士論文『Avantgarde Männersache?』(前衛は男の仕事?)を出版。2006〜2013年、ドイツ日本研究所(東京)にて専任研究員として少子高齢化社会と居住のテーマについて研究。2013年より現職。
https://researchmap.jp/7000_81012
鈴木 賢子(Yoshiko Suzuki)
京都芸術大学特任准教授。美学、芸術論、視覚表象論。東京芸術大学大学院美術研究科美学専攻博士後期課程単位取得退学。分担執筆:“Katsuhiro Miyamoto’s The Fukushima No. 1 Nuclear Power Plant Shrine: ‘Acting-Out’ and ‘Working-Through’” in: Zoltán Somhegyi (ed.), Retracing the Past: Historical Continuity in Aesthetics from a Global Perspective, International Association for Aesthetics, Santa Cruz, 2017. 藤野寛/西村誠 編『アドルノ美学解読――崇高概念から現代音楽・アートまで』(花伝社、2019年)第6章「〈モンタージュ〉論から見るアドルノ美学――モデルネ芸術と死の原理」。論文「W. G. ゼーバルト『アウステルリッツ』における想起の閾としての視覚イメージ――フロイトの「不気味なもの」を手がかりに」(『カリスタ』第20号)、「畠山直哉による陸前高田の写真をめぐって」(『埼玉大学紀要(教養学部)』第54巻第2号)
https://www.kyoto-art.ac.jp/info/teacher/detail/21212
仲間 裕子(Yuko Nakama)
立命館大学名誉教授。西洋美術史、美学。大阪大学文学研究科芸術学博士後期課程修了。博士(文学)。著書に『フーゴ・フォン・チューディ―ドイツ美術のモダニズム』(水声社、2022年)、Caspar David Friedrich und die Romantische Tradition; Moderne des Sehens und Denkens (Reimer Verlag, Berlin, 2011)。編著書に『風景の人類学─自然と都市、そして記憶の表象』(竹中悠美氏と共編、三元社、2020 年)、『美術史をつくった女性たち─モダニズムの歩みのなかで』(神林恒道氏と共編、勁草書房、2004年)。訳著に『イメージ人類学』(ハンス・ベルティンク著、平凡社、2014年)など。
https://researchmap.jp/read0188137
結城 円(Madoka Yuki)
九州大学芸術工学研究院准教授。専門は写真史・写真論、イメージ学、比較文化論。2010年ドイツ・デュースブルク=エッセン大学芸術・デザイン学科写真史・写真論講座にて博士号取得。2011年から2013年までAlfried Krupp von Bohlen und Halbach財団「写真専門美術館キュレータープログラム」キュレイトリアル・フェローとしてフォルクヴァング美術館、ミュンヘン市博物館、ドレスデン国立美術館、ゲッティ・リサーチ・インスティテュートに勤務。2013年から2016年までデュースブルク=エッセン大学芸術・芸術学学科講師。単著にIch-Fotografie: Kommunikationsformen der japanischen Fotografie seit den 1990er Jahren (2013, Kadmos Verlag)
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K008296/index.html